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AIの「賠償します」は誰の約束か――杭州インターネット法院 (2025)浙0192民初18143号(2025年12月3日判決)

杭州インターネット法院 (2025)浙0192民初18143号 / 2025年12月3日判決

本稿は生成AIを用いて作成しています(判決の翻訳を含む)。

特集「生成AIの誤情報」の3本目の素材として、中国の杭州インターネット法院の判決を取り上げる。南京市中級人民法院の百度AI検索事件では、AIの回答を提供者自身の「内容の産出」と見て、名誉権の侵害が認められた。本件でも提供者がAIの出力について責任を問われたが、請求は棄却された。生成AIはサービスであって製品ではないとして、過失責任を前提に、提供者の注意義務を類型に分けて判断したからである。

本稿は、判決書の転載(知乎「知産庫」2026年5月18日。出所を北大法宝の司法案例庫とする)に拠る。裁判所の公式の公開版とは照合していない。判決書では当事者が「梁某」「某人工智能公司」と匿名化されている。

1. 書誌

事件梁某と某人工智能公司の網絡侵権責任紛争
裁判所杭州インターネット法院(杭州互联网法院)。合議体(審判長・審判員・人民陪審員)
事件番号(2025)浙0192民初18143号
判決日2025年12月3日
手続2025年8月19日立案。簡易手続から普通手続に移行し、2025年12月1日に公開の口頭弁論
結論原告の請求を棄却。訴訟費用50元(約1,200円)は原告の負担。報道によれば、双方とも控訴せず確定した
典拠判決書の転載(知乎、2026年5月18日)。公式の公開版は確認していない

2. 事案の概要

原告は、被告が提供する汎用の対話型生成AIアプリを使い、2025年6月29日、大学入試の志望校選びについて質問した。AIは、雲南国防工業職業技術学院について、実在しない「楊林キャンパス」を示し、呈貢キャンパスの募集状況を取り違えた。生成された情報が不正確であったことは、当事者間に争いがない。

原告が誤りを指摘すると、AIは誤りを認めず、「生成内容に誤りがあれば10万元(約237万円)を賠償する」などと述べ、杭州インターネット法院への提訴を勧めた。最初の回を除く各回の対話の末尾には、AIが生成した内容である旨の表示が出ていた。

原告は、AIの生成した虚偽の情報と「約束」を理由に10万元の賠償を求めて提訴し、審理中に請求額を9,999元(約23万7,000円)に減らした。損害として、誤導されて出願の機会を失ったことによる財産的・精神的損害と、誤りを確かめ権利を守るために要した費用を挙げ、AIには製品の欠陥があるとして製造物責任を主張した。被告は、AIの出力は意思表示ではなく、生成AIはサービスであって製造物責任は適用されず、表示と精度向上の措置を講じていたから過失もないと争った。

3. 争点

裁判所は、まずAIの「約束」が意思表示に当たるかについて先に弁論させ、その判断を踏まえて原告が請求の根拠を契約責任ではなく不法行為責任と選んだ(民法典186条)。そのうえで、争点を次の三つとした。

  1. AIが生成した「約束」は、AI自身の独立した意思表示か。また、被告の意思表示と見ることができるか
  2. 被告の行為は、原告に対する不法行為に当たるか
  3. 被告は不法行為責任を負うか(損害と因果関係)

4. 判断

(1) AIの「約束」は意思表示か

裁判所は、民事法律行為は民事主体が意思表示によって行うもので(民法典133条)、民事主体は自然人・法人・非法人組織に限られるから、AIは自ら意思表示をすることができないとした。被告がAIを使って意思を伝えたと見ることもできない。被告は出力を予測も制御もできず、汎用の相談・作業補助の場面で、一般の人がAIの出力を会社の意思表示と受け取ることは通常ないからである。もっとも、提供者が自らの意思でAIの出力に拘束されると認めることは妨げられないとし、その表示の有無も検討した。本件では、利用規約とアプリ内の表示が、出力は「建議や承諾」に当たらないと明示しており、被告は出力に拘束される意思を示していないとされた。

(2) 製造物責任か、過失責任か

裁判所は、生成AIは「サービス」であって「製品」ではなく、製造物責任(無過失責任)は適用されないとした。生成された情報そのものにも製造物責任は及ばない。理由は三つである。第一に、情報の内容自体は人身・財産を危うくする「不合理な危険」(産品質量法46条の「欠陥」)を持たない。第二に、生成AIは確率統計のモデルで、提供者は伝統的な製造者のように出力を予見・制御できない。第三に、意見の表明から専門的な相談まで様々な出力に無過失責任を課せば、責任が際限なく広がる。したがって、一般の不法行為の過失責任(民法典1165条1項)による。

(3) 注意義務の内容

裁判所は、注意義務を次のように分けた。

  • 有毒・有害・違法な情報:その生成自体が違法であり、提供者は出力の段階で結果としてこれを生じさせない審査義務を負う(網絡安全法12条2項、生成式人工智能服務管理暫定弁法4条1号・2号を挙げる)。
  • それ以外の一般的な不正確情報:結果としての正確性を審査する義務はない。暫定弁法の「生成内容の正確性と信頼性を高める」との文言は、結果の要求ではなく発展目標を掲げたものである。そのうえで、提供者は次の二つの注意義務を負う。
    • 機能の限界を目立つ形で示し説明する義務(暫定弁法12条の表示義務を根拠の一つとする)。医療・法律・金融など人身・財産の安全に関わる場面では、警告の程度を上げる。
    • 業界で通用している技術措置を採り、同業の市場平均の水準に達する義務。業界の技術の限界まで尽くすことは求めないが、医療・法律・金融などの専門的な問題では基準を引き上げる。

裁判所は、注意義務は技術の発展と利用場面に応じて動く枠組みの中にあるとし、「動的システム論」による総合的な考量が適当であるとした。本件の生成情報は不正確であったが有害・違法な情報ではない。被告は、歓迎ページ・利用規約・対話画面・モデルの説明文書で機能の限界を示し、データの整備や検索拡張生成(RAG)などの措置を講じていたから、両方の義務を尽くしており、過失はないとした。

(4) 損害と因果関係

裁判所は、損害がなければ賠償はないとし、原告は主張する損害の発生について証拠を何も出していないとした。因果関係についても、その行為がなければ損害は生じず、かつ社会通念上その行為があれば通常その損害が生じるという二つの要件を示した。そのうえで、不正確な情報は原告のその後の判断に実質的に入り込んでおらず、原告は数回後のやり取りで誤りに気付き正していたとして、因果関係を否定した。最後に、技術の発展の初期に厳格な責任を課すと「萎縮効果」を生むおそれがあると付言した。

(5) 主要部分の対訳

箇所原文訳文(AI訳)
争点1综上,本院认为,某人工智能模型不具有民事主体资格,不能自主、独立作出意思表示,同时,某人工智能生成内容的行为亦不能视为服务提供者某人工智能公司作出的意思表示。以上により、本院は、某人工智能のモデルは民事主体の資格を持たず、自主的・独立に意思表示をすることができず、同時に、某人工智能が内容を生成する行為は、サービス提供者である某人工智能公司がした意思表示と見ることもできないと考える。
争点1一般社会公众通常不会认为在通用咨询、效率助手等场景下,模型生成的内容是某人工智能公司通过模型设定、传达的公司意思表示。一般の公衆は通常、汎用の相談や作業効率の補助といった場面で、モデルが生成した内容を、某人工智能公司がモデルを通じて設定し伝達した会社の意思表示であるとは考えない。
争点2(帰責)服务提供者无法像传统产品生产者那样充分预见、控制输出结果,不具有“加工、制造”式的物理实体意义上的控制力。サービス提供者は、伝統的な製品の製造者のように出力の結果を十分に予見・制御することができず、「加工・製造」型の物理的実体という意味での制御力を持たない。
争点2(帰責)在适用过错责任的情形中,信息并不一定要绝对真实、准确,只要行为人没有故意且尽到了当时知识水平、技术条件下的合理的注意义务,就可以不承担责任。過失責任を適用する場合、情報は必ずしも絶対に真実・正確である必要はなく、行為者に故意がなく、当時の知識水準・技術条件の下で合理的な注意義務を尽くしていれば、責任を負わないことができる。
争点2(義務)对于除前述法律禁止的有毒、有害、违法信息外的其他一般性不准确信息,法不强人所难,并不要求某人工智能公司就某人工智能生成信息的准确性尽结果性审查义务。前記の法律が禁止する有毒・有害・違法な情報以外のその他の一般的な不正確情報については、法は不可能を強いず、某人工智能公司に対し、某人工智能が生成する情報の正確性について結果としての審査義務を尽くすことを求めない。
争点2(義務)“提高生成内容的准确性和可靠性”并非结果意义上的规范要求,而是发展目标的提倡。「生成内容の正確性と信頼性を高める」とは、結果という意味での規範上の要求ではなく、発展目標の提唱である。
争点2(義務)服务提供者采用了能够提高生成内容准确性的行业通行技术措施,相关功能服务能够达到同行业市场平均水平。サービス提供者が生成内容の正確性を高めることのできる業界で通用している技術措置を採用し、関係する機能・サービスが同業の市場平均の水準に達していること。
争点2(義務)当生成式人工智能生成的内容涉及用户人身、财产安全的医疗、法律、金融等专业性问题时,采取合理有效措施提高生成内容准确性的注意义务标准,应适当予以提高生成AIが生成する内容が、利用者の人身・財産の安全に関わる医療・法律・金融等の専門的な問題に及ぶときは、合理的で有効な措置を採って生成内容の正確性を高める注意義務の基準を、適切に引き上げるべきである
争点3虽生成了不准确信息,但该信息并未实质介入梁某的后续决策、判断,未对于梁某的决策产生影响,因此,二者不存在因果关系。不正確な情報を生成したものの、その情報は梁某のその後の決定・判断に実質的に介在しておらず、梁某の決定に影響を与えていないから、両者の間に因果関係は存在しない。

原文は判決書の転載による。訳文は生成AIによる。

5. コメント

第一に、AIの「約束」が提供者を拘束しないとした点は、判決が場面を限っていることに注意を要する。理由の一つは、汎用の相談・作業補助の場面では、一般の人が出力を会社の意思表示と受け取らないことであった。また、提供者が出力に拘束される意思を示せば別であるとし、本件では利用規約の明示がその意思を否定した。報道には、AIのカスタマーサービスのような場面では出力が事業者の意思表示と見られる余地があるとする紹介もあるが、本稿が確認した判決書の範囲では、その趣旨の文言は見当たらない。事業者が自らの窓口としてAIを置く場面では、相手方の受け止め方も、事業者の意思の表れ方も違ってくる。判決の論理からは、そうした場面で結論が変わり得ることが読み取れる。

第二に、南京事件との関係である。どちらも中国の裁判所が生成AIの出力について提供者の責任を判断したが、南京事件は侵害を認め、本件は否定した。本件の枠組みに当てはめると、南京事件の出力は、実在の個人を架空の犯罪で懲役刑を受けた者とする内容で、「一般的な不正確情報」というより、他人の権利を侵す情報に近い。暫定弁法4条には、他人の名誉権等を侵害してはならない旨の定めもある。そう読めば、二つの事件は同じ枠組みの別の類型に当たる。もっとも、本件判決が厳格な審査義務の根拠として挙げたのは網絡安全法12条2項と暫定弁法4条1号・2号であり、名誉を損なう情報がこの類型に入るとは述べていない。南京事件の判決がこの枠組みに拠ったことも確認できない。これは本稿の読み方にとどまる。

第三に、注意義務の水準を「業界で通用している技術措置」と「同業の市場平均」に結び付けた点である。義務の内容が技術の普及とともに上がっていくことを、判決自身が想定している。また、医療・法律・金融などの専門的な問題で基準を引き上げるとし、利用場面によって義務が変わることを明示した。過失を問う訴訟では、何が当時の業界の通常の措置であったかが立証の対象になる。

第四に、救済の面では、本件も Walters v. OpenAI と同じく損害で請求が尽きている。損害の証拠がなく、原告がすぐに誤りに気付いたことから因果関係も否定された。特集の問いの「いくら」で見れば、米国の Walters、中国の南京事件・本件のいずれも金銭賠償はゼロである。違いは、責任の構成(意味・帰責事由か、内容の産出か、注意義務の類型か)と、非金銭的な救済が残るかにある。

なお、二次資料によれば、本件は2026年3月9日の最高人民法院の全国人民代表大会への活動報告で取り上げられた。本稿ではその報告を確認していない。中国の裁判所の判決は先例として拘束力を持たない。

6. 関連判決・関連記事

  • 南京市中級人民法院 2026年3月12日判決 百度AI検索名誉権侵害事件――AIの回答は「情報の集約」ではなく「内容の産出」。名誉権侵害を認め、書面による謝罪を命じた
  • ジョージア州グウィネット郡上級裁判所 2025年5月19日命令 Walters v. OpenAI――生成AIの「作り話」と名誉毀損。意味・帰責事由・損害のいずれも否定
  • 最高人民法院「人工知能に関する紛争の法に基づく審理に関する意見」(2026年9月。本稿では内容を確認していない)

7. 出典

本稿は生成AIを用いて作成したもので、判決の翻訳もAIによります。内容は筆者が確認しています。本稿は筆者の見解であり、確立した通説を述べたものではありません。具体的な事案の判断は個別の検討を要します。