Notes
研究ノート
連載「情報の価値」
情報の価値は何によって変わるのか。一つの問いを変数ごとに分け、複数の判決を並べて考える連載。
第1回情報の価値
保護に値する価値、市場価値、損害額は、同じものを測っているか。
- 違反だけでは損害にならない、しかし閾値もない――欧州司法裁判所 C-300/21(2023年5月4日判決)
住所仲介業者が統計的推計で本人の政党への親和性を推知し保持していた事件で、欧州司法裁判所は、GDPR違反だけでは賠償請求権は生じないが、非物質的損害に重大性の閾値を設けることも許されないと判断した。
第2回「不安」は損害か
悪用の「おそれ」を損害と見るか、訴訟要件で切るか。
- 漏えいへの「不安」は損害か――欧州司法裁判所 C-340/21(2023年12月14日判決)
国の税務当局へのサイバー攻撃で600万人超の個人データが流出した事件で、欧州司法裁判所は、悪用のおそれへの「不安」もGDPR 82条の非物質的損害になり得ると判断した。安全管理措置の立証責任と第三者攻撃の免責もあわせて整理する。
- 数日間のネット公開と「僅少性の閾値」――欧州司法裁判所 C-456/22(2023年12月14日判決)
町が住民の氏名・住所を載せた議事日程と判決を同意なくウェブサイトに約3日間掲載した事件で、欧州司法裁判所は、非物質的損害に「僅少性の閾値」を設けることは許されないが、軽微であれ現実の損害の証明は必要であると判断した。
- 勤務先が作った自分の鑑定書――欧州司法裁判所 C-667/21(2023年12月21日判決)
健康保険の医療機関が自らの被用者の就労不能について作った鑑定書を同僚が見られる状態にあった事件で、欧州司法裁判所は、GDPR 82条の賠償は補償的で制裁的でなく、過失は推定され、過失の程度は額に影響しないと判断した。
- 読まれずに戻った書類と「不安」――欧州司法裁判所 C-687/21(2024年1月25日判決)
家電の購入時に作成した契約書類(氏名・収入・口座情報を記載)を店員が別の客に誤って渡し、30分で回収した事件で、欧州司法裁判所は、第三者がデータを知らなかった以上、悪用への不安だけでは非物質的損害にならないと判断した。
第3回情報結合の価値
個々には無害な情報が、結合すると別の価値を持つのはなぜか。
- 大量傍受と「段階ごとに深まる干渉」――欧州人権裁判所 Big Brother Watch and Others v. the United Kingdom(大法廷、2021年5月25日判決)
スノーデンの暴露を契機に英国の通信の大量傍受(バルク傍受)が争われた事件で、欧州人権裁判所大法廷は、傍受の過程が進むほど私生活への干渉が深まるとして「エンド・ツー・エンドの保障措置」を求め、条約8条違反を認めた。
第4回推知情報
価値は情報の性質にあるのか、処理にあるのか。
- 関連:違反だけでは損害にならない、しかし閾値もない――欧州司法裁判所 C-300/21(2023年5月4日判決)(連載「情報の価値」 第1回 情報の価値)
第5回誰にとっての価値か
同じ情報が、事業者・国家・攻撃者・家族にとって、それぞれ異なる価値を持つ。
- 関連:大量傍受と「段階ごとに深まる干渉」――欧州人権裁判所 Big Brother Watch and Others v. the United Kingdom(大法廷、2021年5月25日判決)(連載「情報の価値」 第3回 情報結合の価値)
第6回公開情報の価値
公開されると保護の必要性は消えるのか、むしろ集めやすくなるのか。
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第7回時間と情報の価値
価値は時間とともに減衰するのか、文脈の変化で反転するのか。
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第8回憲法上の位置
情報の価値を、自己決定・人格・私生活のどれに結び付けるか。
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局面別の論点
漏えいした情報の価値が、紛争の中で金額に変わるまでを局面ごとに追う。誰が、どの手続で、いくらと確定するのかを各国の例で見る。
調査
過失と損害の証拠は、調査の時点で作られる。フォレンジック報告書は開示されるか。
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請求
実害がなくても請求できるか。「不安」は損害として数えられるか。海外から請求が届いたとき、何が問題になるか。
- 関連:法律違反だけでは連邦裁判所で訴えられない――米国連邦最高裁判所 TransUnion v. Ramirez(2021年6月25日判決)(特集 誰が漏えいを裁くのか 米国法)
- 関連:違反だけでは損害にならない、しかし閾値もない――欧州司法裁判所 C-300/21(2023年5月4日判決)(連載「情報の価値」 第1回 情報の価値)
- 関連:漏えいへの「不安」は損害か――欧州司法裁判所 C-340/21(2023年12月14日判決)(連載「情報の価値」 第2回 「不安」は損害か)
- 関連:数日間のネット公開と「僅少性の閾値」――欧州司法裁判所 C-456/22(2023年12月14日判決)(連載「情報の価値」 第2回 「不安」は損害か)
- 関連:勤務先が作った自分の鑑定書――欧州司法裁判所 C-667/21(2023年12月21日判決)(連載「情報の価値」 第2回 「不安」は損害か)
- 関連:読まれずに戻った書類と「不安」――欧州司法裁判所 C-687/21(2024年1月25日判決)(連載「情報の価値」 第2回 「不安」は損害か)
- 関連:「従業員が指示に従わなかった」は免責理由になるか――欧州司法裁判所 C-741/21(2024年4月11日判決)(特集 期待される安全管理措置とは何か EU法・加盟国法)
- 関連:初期設定は「全員」だった――ドイツ連邦通常裁判所 VI ZR 10/24(2024年11月18日判決)(特集 期待される安全管理措置とは何か EU法・加盟国法)
- 関連:生成AIの「作り話」は名誉毀損になるか――ジョージア州グウィネット郡上級裁判所 Walters v. OpenAI(2025年5月19日命令)(特集 生成AIの誤情報 米国法)
- 関連:AIの「賠償します」は誰の約束か――杭州インターネット法院 (2025)浙0192民初18143号(2025年12月3日判決)(特集 生成AIの誤情報 中国法)
- 関連:AIの回答は「情報の集約」か「内容の産出」か――南京市中級人民法院 百度AI検索名誉権侵害事件(2026年3月12日判決)(特集 生成AIの誤情報 中国法)
訴訟
個々の小さな損害が束ねられる仕組み。代表訴訟・集団訴訟と、その資金。
- 関連:ワンストップショップと当局の提訴権限――欧州司法裁判所 C-645/19(2021年6月15日判決)(特集 誰が漏えいを裁くのか EU法・加盟国法)
- 関連:苦情と訴訟は並行できる――欧州司法裁判所 C-132/21(2023年1月12日判決)(特集 誰が漏えいを裁くのか EU法・加盟国法)
- 関連:訴訟が係属していても苦情は却下できない――欧州司法裁判所 C-414/24(2026年6月18日判決)(特集 誰が漏えいを裁くのか EU法・加盟国法)
金額
1件いくらになるか。人数と単価、法定損害賠償の有無、古いデータや公開データの扱い。
- 関連:違反だけでは損害にならない、しかし閾値もない――欧州司法裁判所 C-300/21(2023年5月4日判決)(連載「情報の価値」 第1回 情報の価値)
負担の移転
確定した金額を、誰が最終的に負担するのか。
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特集
一つの問いを、複数の法域と判例を横断して扱う記事。
プライバシーへの合理的期待とは何か
「プライバシーへの合理的期待」は、米国では保護の入口として働き、EU法では入口に置かれていない。同じ言葉が、法域ごとに法の中のどこで何をしているのかを比べる。
欧州人権条約
- 職場の通話・メールの記録を調べることも「私生活」への干渉――欧州人権裁判所 Copland v. the United Kingdom(2007年4月3日判決)
公的機関である使用者が、警告なく職員の電話・電子メール・インターネット利用の記録(日時・番号・宛先・閲覧先)を収集・保存した事件で、欧州人権裁判所は、内容を見ていなくても私生活と通信への干渉に当たるとし、監視を規律する法律がなかったことを理由に条約8条違反を認定した。
- 職場の私的な社会生活は「ゼロ」にできない――欧州人権裁判所 Bărbulescu v. Romania(大法廷、2017年9月5日判決)
私的利用を禁止された職場のメッセンジャーを使用者が監視し、従業員を解雇した事件で、欧州人権裁判所大法廷は、使用者の指示で職場の私的な社会生活をゼロにすることはできないとして条約8条の適用を認め、国内裁判所の衡量の不備を理由に違反を認定した。
EU法・加盟国法
記事は準備中です。
英国法
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米国法
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日本法
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誰が漏えいを裁くのか
一つの漏えいについて、EUでは加盟国の当局と裁判所が、米国では連邦と州の裁判所が並び立つ。誰が、どのルートで責任を問うのか。その多元性を判例で読む。
EU法・加盟国法
- ワンストップショップと当局の提訴権限――欧州司法裁判所 C-645/19(2021年6月15日判決)
Facebookのクッキー等による追跡をベルギー当局が提訴した事件で、欧州司法裁判所大法廷は、主監督機関でない監督機関も、規則が決定権限を与える例外の場合に限り、協力・一貫性の手続を守れば越境処理について訴訟を提起・継続できると判断した。
- 苦情と訴訟は並行できる――欧州司法裁判所 C-132/21(2023年1月12日判決)
株主総会の録音の提供をめぐり、監督機関への苦情と管理者に対する民事訴訟が並行した事件で、欧州司法裁判所は、GDPR 77条・78条の救済と79条の救済は並行して独立に行使でき、両者の関係の調整は加盟国の手続法に委ねられると判断した。
- 訴訟が係属していても苦情は却下できない――欧州司法裁判所 C-414/24(2026年6月18日判決)
医師口コミサイトへの削除請求で民事訴訟と監督機関への苦情が並行した事件で、欧州司法裁判所は、訴訟の係属のみを理由に監督機関が苦情を却下することはGDPR 77条1項・79条1項に反し、矛盾回避には手続の停止があり得ると判断した。
米国法
- 法律違反だけでは連邦裁判所で訴えられない――米国連邦最高裁判所 TransUnion v. Ramirez(2021年6月25日判決)
制裁対象者と氏名が一致するだけで警告を付された消費者のクラス訴訟で、米国連邦最高裁は、法律違反と訴権だけでは足りず、具体的な害を被った者だけが連邦裁判所で損害賠償を求められるとし、報告書が第三者に提供されなかった6,332人の当事者適格を否定した。
日本法
記事は準備中です。
期待される安全管理措置とは何か
漏えいがあれば、講じていた安全管理措置は不適切だったことになるのか。裁判所は措置の何を審査し、誰に何を証明させるのか。その基準は時とともに、とりわけAIの時代にどう動くのかを、判例で読む。
- 期待される安全管理措置とは何か――漏えい訴訟で裁判所は何を審査するか
漏えいがあれば、講じていた安全管理措置は不適切だったことになるのか。欧州司法裁判所は、漏えいだけでは不適切とはいえないとしつつ、措置が適切だったことの証明を管理者に負わせた。EU・ドイツ・日本の判例から、裁判所が何を審査するのか、その基準がAIの時代にどう動くのかを読む。
EU法・加盟国法
- 「従業員が指示に従わなかった」は免責理由になるか――欧州司法裁判所 C-741/21(2024年4月11日判決)
広告への異議を無視してダイレクトメールが送られた事件で、欧州司法裁判所は、従業員が指示に従わなかったと主張するだけでは管理者はGDPR 82条3項の免責を受けられず、免責には自らの義務違反と損害との因果関係がないことの証明を要すると判断した。
- 初期設定は「全員」だった――ドイツ連邦通常裁判所 VI ZR 10/24(2024年11月18日判決)
Facebookの電話番号検索機能を悪用したスクレイピングで約5億3,300万人分のデータが流出した事件で、ドイツ連邦通常裁判所は、短時間のコントロールの喪失も損害になり得るとし、検索可能性の初期設定を「全員」にしていたことはデータ最小化原則に反していた可能性が高いと差戻審に指示した。
米国法
記事は準備中です。
日本法
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生成AIの誤情報
生成AIが個人について誤ったことを出力したとき、誰が、どの手続で、いくら責任を負うか。
米国法
- 生成AIの「作り話」は名誉毀損になるか――ジョージア州グウィネット郡上級裁判所 Walters v. OpenAI(2025年5月19日命令)
ChatGPTが実在のラジオ司会者を横領の被告と出力した事件で、ジョージア州の裁判所は、名誉毀損的な意味、帰責事由、損害のいずれも認められないとして、OpenAIに有利な略式判決をした。出力を受け取った記者は1時間半で虚偽と確かめていた。
中国法
- AIの「賠償します」は誰の約束か――杭州インターネット法院 (2025)浙0192民初18143号(2025年12月3日判決)
生成AIが実在しないキャンパスを案内し「誤りなら10万元を賠償する」と述べた事件で、杭州インターネット法院は、AIの「約束」は提供者の意思表示ではなく、生成AIはサービスであって過失責任によるとし、注意義務を尽くした提供者の責任を否定した。
- AIの回答は「情報の集約」か「内容の産出」か――南京市中級人民法院 百度AI検索名誉権侵害事件(2026年3月12日判決)
百度のAI検索が、実在の弁護士について「爆発物罪で懲役3年」という架空の判決を本人の写真とともに表示した事件で、南京市中級人民法院は、AIの回答は情報の集約ではなく内容の産出であるとして名誉権侵害を認めた一審判決を維持した。救済は書面による謝罪にとどまり、金銭賠償は損害の証拠がないとして認められなかった。
子どもの情報
子どもの個人データの収集・追跡を、誰が子どもに代わって、どの手続で争うか。
記事は準備中です。
法域別索引
掲載した記事を、適用される法(法域)から引けるようにした索引。
欧州人権条約
欧州人権裁判所の判決。条約8条(私生活及び通信の尊重)を中心とする。
- 職場の通話・メールの記録を調べることも「私生活」への干渉――欧州人権裁判所 Copland v. the United Kingdom(2007年4月3日判決)(特集 プライバシーへの合理的期待とは何か 欧州人権条約)
- 職場の私的な社会生活は「ゼロ」にできない――欧州人権裁判所 Bărbulescu v. Romania(大法廷、2017年9月5日判決)(特集 プライバシーへの合理的期待とは何か 欧州人権条約)
- 大量傍受と「段階ごとに深まる干渉」――欧州人権裁判所 Big Brother Watch and Others v. the United Kingdom(大法廷、2021年5月25日判決)(連載「情報の価値」 第3回 情報結合の価値)
EU法・加盟国法
GDPR 82条、代表訴訟指令(EU)2020/1828、オランダの集団訴訟制度(WAMCA)。加盟国の国内法に基づく判決もここに入れる。
- 期待される安全管理措置とは何か――漏えい訴訟で裁判所は何を審査するか(特集 期待される安全管理措置とは何か)
- ワンストップショップと当局の提訴権限――欧州司法裁判所 C-645/19(2021年6月15日判決)(特集 誰が漏えいを裁くのか EU法・加盟国法)
- 苦情と訴訟は並行できる――欧州司法裁判所 C-132/21(2023年1月12日判決)(特集 誰が漏えいを裁くのか EU法・加盟国法)
- 違反だけでは損害にならない、しかし閾値もない――欧州司法裁判所 C-300/21(2023年5月4日判決)(連載「情報の価値」 第1回 情報の価値)
- 漏えいへの「不安」は損害か――欧州司法裁判所 C-340/21(2023年12月14日判決)(連載「情報の価値」 第2回 「不安」は損害か)
- 数日間のネット公開と「僅少性の閾値」――欧州司法裁判所 C-456/22(2023年12月14日判決)(連載「情報の価値」 第2回 「不安」は損害か)
- 勤務先が作った自分の鑑定書――欧州司法裁判所 C-667/21(2023年12月21日判決)(連載「情報の価値」 第2回 「不安」は損害か)
- 読まれずに戻った書類と「不安」――欧州司法裁判所 C-687/21(2024年1月25日判決)(連載「情報の価値」 第2回 「不安」は損害か)
- 「従業員が指示に従わなかった」は免責理由になるか――欧州司法裁判所 C-741/21(2024年4月11日判決)(特集 期待される安全管理措置とは何か EU法・加盟国法)
- 初期設定は「全員」だった――ドイツ連邦通常裁判所 VI ZR 10/24(2024年11月18日判決)(特集 期待される安全管理措置とは何か EU法・加盟国法)
- 訴訟が係属していても苦情は却下できない――欧州司法裁判所 C-414/24(2026年6月18日判決)(特集 誰が漏えいを裁くのか EU法・加盟国法)
英国法
代表訴訟の限界とEUとの違い。
記事は準備中です。
米国法
州法の法定損害賠償(CCPA)と、訴訟要件(standing)。
- 法律違反だけでは連邦裁判所で訴えられない――米国連邦最高裁判所 TransUnion v. Ramirez(2021年6月25日判決)(特集 誰が漏えいを裁くのか 米国法)
- 生成AIの「作り話」は名誉毀損になるか――ジョージア州グウィネット郡上級裁判所 Walters v. OpenAI(2025年5月19日命令)(特集 生成AIの誤情報 米国法)
韓国法
個人情報保護法(PIPA)の法定損害賠償と懲罰的損害賠償。
記事は準備中です。
中国法
個人情報保護法(PIPL)の過失推定と公益訴訟。
- AIの「賠償します」は誰の約束か――杭州インターネット法院 (2025)浙0192民初18143号(2025年12月3日判決)(特集 生成AIの誤情報 中国法)
- AIの回答は「情報の集約」か「内容の産出」か――南京市中級人民法院 百度AI検索名誉権侵害事件(2026年3月12日判決)(特集 生成AIの誤情報 中国法)
豪州法
重大なプライバシー侵害に関する法定不法行為と集団訴訟。
記事は準備中です。
日本法
記事は準備中です。